2017年箱根駅伝で3連覇の青山学院大学。チームの指揮をとるのは2004年に同大学陸上競技部に就任した原晋監督です。
異端児と自認する原監督が、より一層のチーム力の向上、更には日本陸上界の改革、発展の為に選んだのが『早稲田大学大学院スポーツ科学研究科』への入学。果たして新宿区にあるその研究室はどういう場所なのでしょうか。
指導者、現役選手問わず学びに来る平田竹男ゼミ
「日本陸上界を改革するために本気で勉強する」と意気込む原監督は、今春から早大スポーツ科学研究科教授 平田竹男氏に師事、社会人修士1年制の『スポーツマネジメントコース』で学んでいます。

写真は201706号月刊EXILEより
今年は原監督の他にJリーグ新潟の池田弘会長も同コースで学びます。原監督は50歳、池田会長は67歳。

写真は日本の社長より
http://www.nippon-shacho.com/interview/in_albirex/
関わるスポーツや所属する団体をより良いものにする為に、学びを続け、歩みを止めないスポーツ指導者、スポーツ団体経営者が集う。そんな場所が、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科スポーツマネジメントコースです。
ゼミの開講は2004年。ちょうどプロ野球球団の新旧入れ替りがあり、スポーツが経済問題として大きく取り上げられた時期でした。
運動生理学やコーチング論、動作解析、メンタルなどアスリート指導学はあっても、スポーツの経営について学ぶ場がなかったため開講当初から第一線で活躍する著名人が集ったそうです。
過去に元巨人軍投手の桑田真澄氏をはじめ、各スポーツ団体の指導者、経営者が同コースで学んでいます。

ゼミで研究されている具体的な課題として7つ挙げられています。
7つの研究課題
- 一定の理念を基に「勝利・普及・資金獲得」という「トップスポーツビジネスの果たす3つのミッション」=「トリプルミッション」の関わりと循環の解明
- 人生におけるトップスポーツビジネスとの関わりと転機に関する「逆台形モデル」の構築(キッズ年代における影響分析を含む)
- トップスポーツのリーグ構造と競技団体研究
- 地域におけるプロスポーツクラブの持続的成長ビジネスモデルに関する研究
- アジアのトップスポーツビジネスの構造分析
- IT産業の発展トップスポーツビジネスのビジネスモデル変革に関する分析
- スポーツ外交、資源外交、ソフトパワー論

平田竹男教授について
平田氏は広島生まれの大阪育ち。小学生から大学までサッカーをする。
中学生の平田少年は、ヨーロッパのサッカー雑誌を読んで3つの夢をみたそうです。
「プロサッカーをつくること」
「W杯を日本で開催すること」
「サッカーくじ(toto)をつくること」
その後、3つの夢は全て実現しています。
大学卒業後通商産業省(現・経済産業省)に入省。入省後ハーバード大学ケネディスクールに留学し、行政学修士を取得。
1989年に通産省サービス産業室でスポーツビジネス拡大検討をきっかけに、川淵三郎氏と知り合い、その後、日本サッカー協会国際委員として2002年日韓ワールドカップ招致に携わるなどサッカー界で活躍しています。
通産省を辞職し、日本サッカー協会専務理事に就任した時には、現役官僚からの転身として話題になりました。
2003年からは早稲田大学で『トップスポーツビジネス最前線』という授業を担当。その後、専務理事の職務を通し、Jリーグのチームの経営者の現実を知る事により「プロフェッショナルなクラブ経営者を育成しなければいけない」という想いが生まれ、『修士1年生のトップスポーツマネジメントコース創設』に繋がります。
2006年に、日本サッカー協会専務理事を任期満了で退任し、早大スポーツ科学研究科教授に就任。
以後、日本スポーツ産業学会理事長、日本陸上競技連盟理事、日本体育協会理事、日本プロテニス協会常務理事、東京マラソン財団理事(2010年から2013年まで)を努めました。
現在は、2013年から内閣官房参与、内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局長を努めています。

写真は茨城新聞対談記事より
桑田氏に平田氏を紹介した、Jリーグガンバ大阪元コーチのユン・テジョン氏は、
「通産省に在籍していた時、中東各国に乗り込んで、大臣に対しサッカー談義を駆使した独特のスタイルの直談判で石油利権を獲得したり、外務省に出向しブラジルの日本大使館に勤務していた時、ブラジルの国会議員の懐に入って、巨額の累積債務を返済させた。とてつもなくスケールの大きな人」
と言っています。
「スポーツにとどまるな」「やりたいと思ったことは率直に、迷わずやれ」と教壇で言う平田教授、
「スポーツは社会になくてはならない大事なもの。多くの人がスポーツで社会を学んでいます。スポーツを通じて友達を作ったり、自分を知ったりします。
そのなかからトップアスリートが出てきて、国を代表して戦う姿を見てアイデンティティを自覚する。
まさに社会の公器なのです。」
とスポーツについての魅力を語り、一方で、継続していくためのマネジメントや新しい技術、エンターテイメントとの融合も重要と言います。
青学黄金時代はより盤石なものになるか!?
青学はチーㇺとして圧巻の強さを見せています。原監督が大学院で学んだ事を活かし、チーム力を向上させるスキルを習得する事ができれば、青学の地位はより強固なものになっていくことでしょう。
最近ではメディア出演も目立つ原監督。多忙の中でも『監督』と『学生』の両立を実現させ、大学陸上界、さらには日本の陸上界を引っ張って行ってもらいたいですね。
修士論文提出予定日は2018年1月上旬です。原監督は箱根駅伝終了後、論文提出の準備に追われる事が予想されます。「箱根駅伝4連覇を果たし晴れて卒業」となるのでしょうか。これからも『学びを続け歩みを止めない指導者・原晋』から目が離せそうにありません。
平田竹男氏の本こちらもどうぞ